金箔の製造方法

縁付金箔ができるまで

約400年以上の伝統がある製法で、雁皮紙を藁灰汁や柿渋などに没けて仕込んだ箔打紙を用いて、金箔を打ち延ばします。延ばし終えた金箔は正方形に整えるために、竹製の道具を用い、一枚一枚、規定の大きさに裁断します。
金箔の製造は大きく3つの工程にわけられます。

「澄」の工程は、澄屋と呼ばれる職人が担当し、「箔」の工程は箔屋(箔打師) と呼ばれる職人が行います。紙仕込みは、それぞれの工程で用いる紙を製紙家から購入し、澄屋、箔屋が行います。

工程(澄屋)

1金合(かねあ)わせ

純金とわずかな銀と銅を合わせ、約1300度の高温で溶かし、合金をつくります。配色比率は金箔の用途によって定められており、それぞれ金箔の色味が異なります。

  • 金・銀・銅

2延金(のべがね)

  • 合金を帯状に延ばしたものを「延金」といい、ロール圧延機で何度もローラーがけをし、約20分の1mm程度までの薄さに延ばします。

帯状の延金は約5cm角に切りそろえ、一枚ずつハトロン紙に挟み、200枚を1パックにして三味線皮で包み、打ち延ばしに使われる「澄打機」でまんべんなく延金を打っていきます。

  • 澄打機

3小兵(こっぺ)

  • 13cm角ほどまで延ばされた状態のものを「小兵」といいます。
    小兵を一枚ずつ大きなハトロン紙に移し替え、再度、澄打機で延ばしていきます。

  • 澄打機

4荒金(あらがね)

  • 18cm角ほどまで延ばされたものを「荒金」といいます。

5小重(こじゅう)

荒金を包丁で四等分に裁断し、「小重」と呼ばれる大きさの澄打紙に移し替えます。再度、澄打機で小重の紙いっぱいなるように叩き延ばしていきます。

6大重(おおじゅう)

  • 小重の大きさから一回り大きなサイズの「大重」と呼ばれる「澄打紙」に移し替えます。
    これを再度、澄打機で紙いっぱいなるように4時間程度延ばし、1/1000mmの薄さにまで延ばしていきます。

  • 澄打機

7化粧・化粧打ち

  • 大重の大きさになったものを、ハトロン紙に移し替え、軽く澄打機で打ちます。
    これにより、柔らかく粘りのある表面をつや消状のサラサラな状態にし、扱いやすくします。

  • 化粧打ち前/化粧打ち後(上澄)

8仕上げ

  • 20cm角の大きさに裁断します。これを「仕上澄」または「上澄」といいます。

工程(箔屋)

1澄切(ずみきり)

  • 澄屋で作られた、20cm角の上澄を大小の正方形や長方形に9~12枚程に切り分けます。これは、最終的に仕上げる金箔の重さを均一にするためです。

  • 上澄/小片の例
  • 形を組み合わせ重さを均一にする

2仕入(しきい)

3小間(こま)打ち

4渡し仕事

  • 小間打ちが終わった上澄を「小間」といいます。この小間を「まま紙」と呼ばれる箔打紙に打つし替えます。打つし終えた、まま紙を電熱器で暖めます。これを「火の間作業」といいます。

  • 渡し仕事
  • 火の間

5打ち前

  • 火の間作業を終えたあと、箔打機で1万分の1mmまで延ばしていきます。

  • 箔打機

6抜き仕事

  • 1万分の1mmまで延ばされた箔を三椏紙(みつまたし)でつくられた「広物帳(ひろものちょう)」とよばれる一時保管用冊子に1枚1枚挟み替えます。
    箔打ちで使用した「まま紙」は金粉等を払い、再度箔打紙として利用します。

7うつし仕事

  • 広物帳の箔を、鹿皮を張った革盤(かわばん)に竹箸で移し、枠(わく)と呼ばれる四角い竹製の刀で規定の大きさに1枚1枚裁ち、「箔合紙」と呼ばれる三椏製の紙の上に1枚づつ重ねていき、100枚を一包として完成品とします。

8完成

  • 縁付金箔の完成です。
    このように、完成箔を台紙の上に一枚一枚重ねる時に、台紙の寸法が金箔を縁どるようにひと回り大きいことから「縁付」と呼ばれる理由です。

仕込み

縁付金箔を極限の薄さに打ち延ばすには、4種類の伝統的な手漉き紙が欠かせず、紙次第で金箔の良し悪しが決まります。

澄打紙(ずみうちがみ)

  • 澄工程で使用します。
    原料は、ニゴと称する稲藁の穂先部分を切除した茎部分(80~90%)とし、楮(こうぞ)(20~10%)を加えて漉く特殊紙で、澄屋が約1週間ほどかけて紙仕込みを行います。

  • 手漉き和紙/澄打紙

紙仕込み

  1. 1.水に濡らした紙(2枚)と濡らしていない紙(10枚)を交互に挟んでいきます。
  2. 2.湿りが行き渡るように、一晩おきます。
  3. 3.湿りが行き渡った紙を、紙仕込み用の機械にかけ、叩いていきます。
  4. 4.叩かれた紙は、くっついているため、1枚1枚はがしていきます。
  5. 5.叩く、はがすの作業を数回くりかえし、完成します。
  • 叩く/はがす

箔打紙/下地紙(はくうちがみ/したじがみ)

箔工程で使用します。
原料は、雁皮と特殊な土を混入して漉かれた特殊紙で、その原紙は下地紙と呼ばれます。これを箔打師が、多大な時間と労力を費やす複雑な紙仕込みを行って「箔打紙」に仕立てます。この紙の加工技量が、金箔の良し悪しを決めると言っても過言ではなく、箔打師は金を打つよりも、紙仕込みにはるかに長い時間をかけます。
また、使い込んで用途を終えた箔打紙は、あぷらとり紙として再利用します。

紙仕込み

工程その1
のべ仕込み
  1. 1.紙を約18cm角に裁断し、紙についているゴミや不純物を取り除き(「ちり掃き」)、幾枚かを単位にして、菊の花びらのように「菊ちがい」にします。
    • 泥入り手漉き雁皮紙
    • ちり掃き
    • 菊ちがい
    • 2.水分を含ませた「白蓋(しろぶた)」1枚に対し、下地紙10~20枚を狐ね、約一晩、水分をむらなく没透させます。
    • 白蓋
    • 3.水分が没透した下地紙を、アク打機で水分が均等になるまで叩いていきます。(「アク打ち」)
    • アク打機
    • 4.叩かれた紙は、紙同士がくつついているため、1枚1枚はがしていきます。(「手数」)
    • 手数
    • 5.叩く、はがすの作業を何度もくりかえします。(約20回)
    • 叩く
    • はがす
工程その2
灰汁(あく)
    • 6.稲藁を燃やし、燃えかすを桶に入れ、水またはお湯を注ぎ、滴り出る液を灰汁汁(あくじる)といいます。
    • 稲藁を燃やす
    • 7.灰汁汁に柿渋、卵の黄身や白身を混ぜあわせます。
      柿渋は紙を強く、黄身や白身は紙を沿らかにする役割があります。
    • 8.この灰汁汁を下地紙に浸透させていきます。(「灰汁漬け」)
    • 灰汁漬け
  1. 9.十分に吸い込んだ紙をしぽり棒を使って固く絞り、幾枚か束にしたものを、ゴザに挟みこんで適度に水分を抜きます。(「ぬれぽし」)
    • ぬれぽし
    • 10.ぬれぽし後、1枚1枚はがし(「手数」)、幾枚か束にしてアク打ち機で叩き、紙の水分が均等になるようにします。(「アク打ち」)
    • 手数
    • アク打ち
これらの作業(6~10)を何度も繰り返します。
工程その3
火あげ
  1. 11.紙を火にかけて湿りを飛ばし、数回アク打機で叩き紙を締めて完成します。
    • 火あげ
    • 箔打紙

白蓋(しろぶた)

下地紙の紙仕込みの工程で使用します。桔100%の厚い紙です。

箔合紙(はくあいし)

三椏100%の紙で、出来上がった金箔を保存するためのホルダー台紙として使用されます。

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